探偵の知識

渡邉さんでさえ探偵が勘まるんだから、私だったらスグに女探偵のトップの座に君臨してみせるわっ！！」
と、入学するや、いきなりケンカを売ってきた女子大生がいた。何を根拠にしてか、自合満々で昇息が荒い。それだけではない。ライバル心を剥き出しにして、何かにつけて私と張り合おうとするのだから困る。こちらとしては、貴重な女探偵の卵だから、額に青筋を立てながらもお客さん扱いに徹したが。
しばらくすると、そんな彼女の強気の根拠が発覚。彼女の通学の際に、必ず稲垣吾郎似の青年が送迎に現れるのだが、それがなんと子分だというのだ！！！ お世辞にも彼女は美人とはいえないし、どうしてあんなカッコイイ男のコがついていることやら…....。いやいやヒガミではなく。
しかもその子分は、探偵としての才能も持ち合わせている。彼女はピンサロでバイトをしていて（自ら公言してはばからない）、彼女についた客が店を出たあと、彼がその客を尾行するというのだが、その成功率は素晴らしく、約600人を尾行して、失敗したのはたったの10数人だというのだ。もちろん、きちんとした報告書と写真も残されている。そればかりか、彼女に、「渡邉さん、昨日、〇〇してたでしょ！」なんて突っ込まれたことがあったが、それも、どうやら尾行していたらしい。この私に気づかれずに尾行できるなんて見上げたものだ！！！
いずれは、2人で独立して探偵社を開くつもりだというが、尾行をはじめとする実質的な探偵活動ばかりか、探偵の仕事として重要な依頼者との折衝など、探偵と
しての適性は子分のほうが高いわけだから、彼女はいったい何をすればいいのだろうか！？ だが、当の彼がいうには、「Wさん（彼女）についていって立派な探偵になりたい」とのこと。"彼女によほど強くマインドコントロールされているのでは！？/というのが、もっぱらの噂なのだ。
現在、彼女は探偵学校を卒業して、わがガル・エージェンシーに就職し、独立のための準備をしているところだ。もちろん、今ではきっちりシゴいてあげてるけど。そして、彼はといえば、やはりうちに就職しているんですねぇ。彼女の就職は彼とセットというのが条件だったのだから。