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探偵の知識

売り上げを持ち逃げしたはいいけれど....

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

大阪で中堅パチンコチェーンを経営しているという社長さんから、元従業員を探してくれという依頼が舞い込んできた。なんでも、社長が出張中に彼が売り上げを持ち逃げしたのだという。念のため、今までの帳簿を調べてみたところ、案の定使い込みもしていた。おかげで被害は総額2000万円にも達しているという。その社長は、10日以内に見つけ出してくれればいくらでも支払うという面白い条件を出してきた。
よくよく話を聞いてみると、この社長さん実は雇われ社長で、実際のオーナーは別にいるとのこと。そしてそのオーナーが、もし10日以内に彼のことを発見したら、持ち逃げしている現金の半額をくれると社長に約束してくれたのだという。通常、大阪の案件は大阪で取り扱うのが普通だが、「大阪はワシらのコネで探す
さかい、ソイツの実家がある東京の方を頼んますわ」とのこと。おそらくその"コネ”とは恐い方々のことだろう・・・・。
早速、対象者の写真を送ってもらい調べはじめたのだが、この対象者、あまりにも特徴のない顔をしているので予想以上に調査は手間取った。むろん、実家には戻ってきた形跡はないし、サウナや山谷など姿を隠しやすい場所をシラミ潰しにあたっていっても手がかりはまったく掴めなかった。そして、アッという間に10日間は過ぎてしまった。「やっぱり、10日間じゃ無理やったようだな。ま、ええわ。とにかく探してくれ」一援千金を逃して落胆したものの、再び私は調査を開始した。
故意に居場所を隠そうとしている人を10日程度の短時間で探すのは至難の業だ。
人間、1ヵ月程度なら誰にもコンタクトをとらずに生きていけるからだ。しかし、それが2ヵ月、3ヵ月と経っていくと必ずホームシックになるし、お金にも困りはじめるので、何らかの動きをしはじめる。私たちは対象者のその動き”を待ちかまえているのだ。
今回の場合、対象者が1000万円近い現金を持っているため、なかなか尻尾をだしてくれないのではという心配があった。しかし、実際にはそれとまったく正反対の結果を迎えることになった。
約1ヵ月後、ビジネスホテルをシラミ漬しにあたっていったところ、大きな荷物をいつも大切そうに抱えている男がいるという情報を私はついに掴んだ。最近は銀行に匿名口座を作ることができないため、大金を隠すのに困ることが多い。で、結局こういった事件を起こした人は、自分でお金を持ち歩いているということが少なくないのだ。
私は、対象者が泊まっているらしいビジネスホテルの前で張り込みはじめた。すると、ほどなく大きな黒いボストンバッグを抱えた対象者が外出先から戻ってきたではないか!!! 私は早速、依頼者に潜伏先のホテルの所在地を連絡したのだった。
わずか数時間後、依頼者は絶対に堅気ではないだろうなという風体の男性2人を連れてやってきて、対象者を拉致。そのまま大阪へと帰っていった。はっきり言って、この使い込みをした対象者が今どこにいるか私は知らない。
できればどこかで生きていてくれるといいのだが・…・…・・。皆さんもくれぐれも会社のお金の使い込みなどしないように。
もし、会社のオーナーが堅気じゃなかったら、どんな目に会うからわかりませんよ!!!